ニュースの概要
Envaliorは、インド西岸で回収した使用済みの漁網を原料にした再生ポリアミド6(PA6)「Durethan P25-95R2」が、富士フイルムビジネスイノベーションの複合機「Apeos C7072シリーズ」の背面ケーブルカバーに採用されたと発表した。回収された漁網は選別と洗浄を経て、インド・プネの工場で粒状の樹脂に生まれ変わる。ケーブルカバーには強度や寸法の安定性が求められるが、再生材でもその条件を満たしたという。海に流出するおそれのある漁網を、事務機器の部品という身近な製品に戻す取り組みであり、新品の樹脂に並ぶ品質を示した点が要点である。
引用元: 使用済み漁網由来の再生PA6を富士フイルムの複合機部品に採用(PR TIMES / Envalior Japan)
分析・見解
漁網が再生材の原料として向いている理由
漁網の多くはナイロン、つまりPA6でできている。丈夫で水に強い反面、海に流出すると分解されず、生き物にからまり続ける。太平洋のごみが集まる海域では、重量で少なくとも約46%を漁具が占めるとの調査結果もある。
素材の面でも利点がある。漁網はほぼ単一の樹脂でできており、複数の素材が混ざった家電ごみより、きれいに再生しやすい。回収の手間さえ解決できれば、良質な原料になる。
機械の裏側から始めるのは合理的な一歩
今回の採用先は、複合機の背面にあるケーブルカバーである。利用者の目に触れにくく、色むらや見た目の差が問題になりにくい。一方で、配線を守るために割れにくさが必要で、熱や荷重で形が変わらないことも求められる。
つまり、再生材の実力を試すのにちょうどよい部品だ。いきなり外観の主役に使わず、実績を重ねてから範囲を広げる。この段階的な進め方は、品質で失敗できないメーカーにとって筋が通っている。
繊維向けの再生ナイロンとは何が違うのか
漁網のナイロンを再生する取り組み自体は新しくない。イタリアのAquafilが手がける再生ナイロン「ECONYL」は、衣料やカーペットの分野でよく知られている。
今回の違いは、射出成形用の樹脂(=熱で溶かして型に流し込み、部品を作る材料)である点だ。しかも用途は、長く使われる複合機の部品である。繊維と成形部品では求められる強度や精度が異なる。再生ナイロンの出口が、衣料から機械部品へ広がった意味は小さくない。
量を増やせるかは回収の仕組み次第
課題も残る。漁網は海水や汚れ、他の素材が付いて品質がばらつきやすい。安定した品質の原料を集め続けられなければ、部品メーカーは採用に踏み切れない。
インド西岸で回収し、現地の工場で樹脂にする形は、運搬を減らす点でも合理的である。ただし、量を伸ばせるかは、漁業者が古い網を持ち込みたくなる報酬や回収拠点を整えられるかにかかっている。技術より仕組みが成否を分ける。
ビジネスへの影響
調達担当が先に確かめたい三つの点
再生材の採用を考えるとき、価格に目が向きがちだ。しかし先に確認したいのは三点である。原料の出どころをたどれるか。新品と同じ試験に通るか。供給が途切れないか。
根拠の弱い環境の主張は、うわべだけの配慮と批判されるおそれがある。第三者の認証や、再生材の比率が示されているかを見ておくと安心だ。
小さな部品で試して社内の合意を固める
全部品を一度に切り替える必要はない。外から見えず、安全に直結しない部品で試せば、設計、品質、調達の各部門が納得しやすい。今回の背面カバーのような部品は、まさに入口に向いている。成功したら、試験結果を数字で示し、次の部品へ広げていける。
取引先からの情報開示に備える
大手メーカーは、部品に使う再生材の比率や調達先の情報を、取引先に求めるようになっている。部品や素材を供給する中小企業にとって、再生材を扱えることは新しい取引の入口になる。逆に、対応が遅れると、見積もりの土俵にさえ上がれない場面も出てくる。
まずは自社製品の素材構成を一覧にし、再生材に置き換えられる箇所を洗い出すことから始めたい。