ニュースの概要
豊通ケミプラス、三洋化成工業、エボニック・インダストリーズの3社が、使い終えたポリウレタンフォームを化学的に分解して再生ポリオールをつくり、再び製品づくりに使う取り組みを共同で始めた。対象は自動車のシート、マットレス、家具などに使われる軟らかいフォームである。現状では、埋め立てや焼却に回る例が多い。そのため温室効果ガスの排出や、最終処分場のひっ迫が課題になっている。砕いて固め直す従来のマテリアルリサイクルには、品質や用途に限りがあった。そこで3社は、素材を原料の段階まで戻すケミカルリサイクルによって、新品に近い性能の再生原料を実現する道を探る。
引用元: 豊通ケミプラス、三洋化成、エボニックがポリウレタンフォームのケミカルリサイクルで共同取り組み(Response)
分析・見解
砕いて固める方式では越えられなかった品質の壁
ポリウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートという二つの液体が反応してできる。反応が済んだフォームは、熱を加えても溶けない「熱硬化性」の樹脂である。ペットボトルのように溶かして成形し直すことができない。そのため従来は、細かく砕いて接着剤で固めた「チップフォーム」にするのが主流だった。運動用マットや車の床下の吸音材には向くが、シートやマットレスの本体に戻すことは難しい。品質が下がる使い方、いわゆるダウンサイクルにとどまっていたのである。
日本でも、使い古したマットレスはかさばるため処分費がかさみ、焼却や埋め立てに回りやすい。出口が細いことが、問題の根にある。
原料に戻すと、新品と同じ用途に返せる可能性がある
化学分解でフォームをポリオールに戻せれば、理屈の上では新品の原料と同じように使える。ペットボトルを繊維に変えるのではなく、再びボトルに戻す水平リサイクルに近い発想だ。ただしフォームには、難燃剤、着色料、繊維、接着剤など多くの異物が混ざる。分解後の液体から不純物を取り除き、におい、色、反応の速さをそろえる工程が最大の難所になる。
ここで価値が決まるのは、分解の化学そのものより「集め方」だと考えている。同じ種類のフォームだけを大量に集められれば、不純物は減る。自動車シートは解体業者に集まりやすく、最初の原料源として有望である。
三社の組み合わせが示す、素材メーカー主導の連携
三洋化成はポリオールをつくる側、エボニックはフォームの泡の安定や硬化を調整する添加剤の大手である。つまり「原料」と「配合の調整役」が同じテーブルに着いた形だ。再生ポリオールは新品と性質がわずかに違うため、添加剤で補正できるかが品質の鍵を握る。そこに添加剤メーカーが入る意味は大きい。商社機能をもつ豊通ケミプラスは、使用済み品の回収と再生品の販路をつなぐ役を担うと考えられる。
欧州の規制が、日本の自動車部品にも波及する
欧州では、自動車に使うプラスチックの一定割合を再生材にする規則が議論されている。マットレスについても、使用済み品を回収する制度が国によって整いつつある。日本の部品メーカーも、輸出向けや欧州メーカー向けでは、再生材の使用を求められる場面が増えるだろう。今回のような国内連携は、その要請に応える供給網を前もってつくる動きとして読める。
ただし、再生ポリオールのコストが新品を上回る間は、需要は規制や大口顧客の要請に左右される。技術の完成度だけでなく、価格をどこまで下げられるかが普及の速度を決める。
ビジネスへの影響
調達担当が今から確認しておきたい三つのこと
素材や部品の調達担当者は、取引先に三点を聞いておきたい。再生ポリオールを採用する予定はあるか。新品との品質差はどの程度か。再生品の比率を証明する書類を出せるか。再生材は、マスバランス方式(=再生原料の投入量を帳簿上で製品に割り当てる方法)で供給される場合が多い。この方式でも顧客が認めるかを、事前にすり合わせておくと手戻りが減る。調達先を一社に絞っている場合は、再生材を扱える二社目の候補も探しはじめたい。
小さな会社でも動ける、使用済み品の出口づくり
家具、寝具、内装を扱う中小企業には、出口の整理が現実的な第一歩になる。解体や交換で出るフォームを素材ごとに分別し、量と種類を記録するだけでも、将来の回収事業者との交渉力になる。混ぜて捨てれば、再生の候補から外れてしまう。また、解体時に金属部品やカバー生地を外しておくと、再生の品質が上がる。作業手順に一行足すだけで済む工夫である。
価格上昇を見込んだ予算と説明の準備
再生品は当面、新品より高くなる前提で考えたほうがよい。価格差を吸収するには、環境対応を理由にした値上げ交渉より、取引先の排出量算定に役立つデータを提供する形のほうが通りやすい。見積書に再生材の比率と削減量の目安を添える工夫が有効だ。数年後には、これが入札や商談の足切り条件になる可能性もある。経営者は、投資判断の物差しを「今期の原価」だけでなく「三年後の取引条件」にも広げてほしい。