ニュースの概要
プラスチックのリサイクル事業を手がけるesaと、建築分野のデジタル設計を担うDigitalArchiが、廃プラスチックを建築用の3Dプリント型枠へ再生する取り組みを始めた。型枠とは、コンクリートを流し込んで形を作るための仮の枠である。通常は木材や金属で組み、使い終われば捨てられることが多い。そこに回収したプラスチックを素材として使い、3Dプリンターで複雑な形の型枠を造る発想だ。廃棄物を減らしながら、これまで手間のかかった曲面や凹凸のある造形を現実的な費用で実現できるか。この点が、取り組みの核心にある。
引用元: プラスチックリサイクルのesaとDigitalArchi、廃プラスチックを建築用3Dプリント型枠へ再生する取り組みを開始(PR TIMES)
分析・見解
捨てられる素材を、使い捨ての型枠に変える発想の巧みさ
日本の廃プラスチックは年間800万トン前後といわれ、その多くは焼却して熱を利用する形で処理されている。いわゆる熱回収である。再び素材に戻る割合は、おおむね2割台にとどまる。つまり、集めた後の「出口」が足りていない。
建築の型枠は、その出口として相性がよい。型枠は完成した建物の表に出ないため、見た目や手触りの品質を厳しく問われにくい。混ざり物の多い再生プラスチックでも使える余地がある。しかも一度きりの使用が多く、需要が途切れにくい。
型枠が変われば、建物の形が変わる
従来の型枠は、板を切って組む。平らな面は安く作れるが、曲面は急に高くなる。職人の手間が増えるためだ。3Dプリンターなら、曲面も凹凸も、入力したデータどおりに積み上げられる。形が複雑でも、費用はあまり増えない。
海外では、3Dプリント型枠で曲線の壁や柱を造る例が出ている。コンクリートそのものを印刷する方法に比べ、鉄筋を入れやすく、従来の構造設計の考え方をそのまま使える点が強みだ。法令の枠内で採用しやすい、という実務上の利点もある。
再生材ならではの技術的な壁
とはいえ、課題は少なくない。第一に、再生プラスチックは原料の質が一定しない。種類や汚れの違いで、溶けやすさが変わる。印刷時の反りや寸法のずれにつながる。このため、材料の選別と配合の管理が、事業の腕の見せどころになる。
第二に、コンクリートは流し込むときに大きな圧力がかかる。型枠が変形すれば、仕上がりが狂う。強度と精度の確保が欠かせない。第三に、使用後の扱いである。型枠を外して粉砕し、次の型枠に使える循環ができるかどうかで、環境面の価値が決まる。一度使って焼却するなら、単なる回り道になる。
数字で示せるかが、普及の分かれ目
環境に配慮した建材は、効果が数字で見えないと広がらない。二酸化炭素の削減量、型枠の使用回数、廃棄物の削減量を、従来工法と並べて示す必要がある。発注者や元請けが知りたいのは、「結局いくら安く、いくら早く、どれだけ環境に良いのか」である。
もう一つ、見落とされがちな視点がある。3Dプリンターは、材料さえあれば現場の近くで造れる。回収した廃プラスチックを地域で型枠にし、地域の工事で使う。運搬が減り、地域の廃棄物が地域の建物に変わる。リサイクルを「処理」でなく「地産地消」として語れれば、自治体や地元の建設会社の関心も引きやすい。
ビジネスへの影響
採用を検討する前に、現場で確かめたい三つの点
建設会社や設計事務所が試す場合、まず確かめたいのは、型枠の寸法精度、コンクリートの圧力に耐える強度、そして外したあとの回収方法である。この三つが分かれば、小さな部位で試せる。たとえば、化粧柱、外構のベンチ、花壇の縁など、構造に影響しにくい場所が向く。いきなり主要な構造に使う必要はない。
費用の比較も欠かせない。木製型枠は材料が安く、直線なら今も強い。曲面や、同じ形の繰り返しが少ない案件でこそ、3Dプリントの価値が出る。形の複雑さと数量で、損得の分かれ目を見極めたい。施工側では、型枠の取り付けや撤去の手順が変わる点にも注意が要る。従来の職人の段取りと合わないと、期待した工期短縮が出ない。事前に施工班と一緒に、取り付け方を試しておくとよい。
廃棄物を出す側にとっての新しい選択肢
工場や店舗で大量にプラスチックを出す企業にとって、処理費用は年々重くなっている。回収先が「建築資材になる」と説明できれば、環境報告書や取引先への説明で使える。自社の廃棄物がどの建物に使われたかを追える仕組みがあれば、さらに説得力が増す。ただし、素材の種類をそろえて分別する手間はかかる。分別の精度が、再生の条件に直結する点は知っておくべきだ。
小さく試し、記録を残す
最初の一案件で、使用量、工期、廃棄量、費用を記録しておく。数字が残れば、次の入札や提案で強い材料になる。また、成果を提案書やホームページで発信するときは、「再生材を使用」と書くだけでなく、使用割合と根拠を添えたい。曖昧な表現は、環境面の主張を誇張していると受け取られる恐れがある。記録を持つ会社が選ばれる。